久々に爆睡し昼に起きだしテレビをつける。先月行われた将棋の勝負のドキュメンタリーを見る。人間対コンピューターの戦いだ。
現在の竜王渡辺明が最強の将棋ソフト、ボナンザと対決していた。チェスの世界ではIBMのディープブルーがもう何年も前に世界チャンピオンを倒している。
しかし将棋はとった駒をすべて使えることから指数関数的に手数が増え、それゆえコンピューターが将棋のプロに勝つのはまだまだ先と思われていた。
今回の下馬評も竜王が圧倒するというものであったが、予想を裏切り戦いは白熱と緊迫の中進んでいく。ボナンザが強いんだ。
ボナンザ優勢で進んだ中盤、一手の読み違えで突然流れは竜王に。そのまま堅実に寄せて竜王が結果的には順当勝ち。
見ごたえのある試合だった。ボナンザを作ったホキさんは自分たちが優勢なのかどうかもわからない。システムは状況に対する評価を一手毎にはじき出す。しかし、その大きな一手の過ちを過ぎても状況有利の指数を表示する。
突然その指数がマイナスに触れそして終わりがやってくる。ホキさんはシステムを見切り自力で投了のタイミングを計る。たくさんのギャラリーが見つめる緊張の中、立ち上がり「参りました」を竜王に伝える。同じく若い竜王は安堵の表情を浮かべ、そして言葉少なに検討をたたえあう。真剣勝負の後のさわやかさが全体を包む。
多くのものを見た。
コンピュータのうまくいっている時の周到さ緻密さそして速さ、そしてうまくいかなくなった時の混乱。
参ったしないコンピュータをなだめすかすかのように投了のタイミングを計るホキさん。「もういいんだよボナンザ」といういたわりと竜王に礼節尽くそうという表れだ。
解説や観戦していたたくさんの将棋の棋士や将棋ファンもこの予想外の大一番に興奮していた。コンピューターが名人を打ち破るのもあと数年先かもしれない。
それにしてもこの対局を受けた渡辺明竜王はすごい。リスクは多いが得るものは少ない。勝って当たり前負ければ竜王、将棋プロの名を汚す。ものすごいプレッシャーだったろう。まだ23歳。この持前の勇気、チャレンジ精神とこの経験を糧に彼はきっと今以上に強くなっていく。チャレンジが人を大きくする。